猿沢池のほとりにある采女(うねめ)神社では毎年中秋の名月の夜、「采女祭」がおこなわれます。
「采女」とは奈良時代、天皇家に仕えて身の回りのお世話をした女性のこと。
その中の一人のある采女が、帝の寵愛が衰えた、つまりあまり可愛がられなくなったことを嘆いて猿沢池に身を投げて自殺したのです。
それを知った帝が采女の霊を慰めるために建てたのがこの采女神社。
普段は戸が閉じられているのであまり目立ちませんが、采女祭の時だけはここで神事のほか猿沢池に2隻の管弦船を浮かべて大きな花扇を投じる「管弦船の儀」がおこなわれるなど雅な雰囲気に包まれてにぎわいます。
池にはすでに管弦船が。
お月見用に秋の七草の花束も販売されてますね。
これまではコロナ禍のために関係者だけで規模を縮小しておこなわれてきましたが、今年は4年ぶりの通常開催。ぜひ当日に見たかったのですが用事が入ってしまったので前日の宵宮祭へ行ってきました。
一年に2日、采女祭の時だけ開かれる授与所。采女神社は春日大社の末社なので、春日大社の巫女さんがやって来て奉仕されます。
ここではこの両日だけ授与される「糸占い」があります。
赤い糸と縫い針がセットになっていて、月明かりの下で張りに糸を通すことができれば恋や願い事が叶うというとてもロマンチックなものなんですよ。
福島県郡山市からは親善使節団の皆さんが。
郡山市にも同じような采女伝説が伝わっており、一説には猿沢池に身を投げた采女の出身地だったとも言われています。
毎年8月には同じように「郡山うねめまつり」がおこなわれますよ。
そうした縁で、奈良市と郡山市は昭和46年に姉妹都市提携を結んで、今も交流が続いています。
いつもは扉の向こうで拝むことができない本殿もこの日は開放され、神事の後に参拝することができます。
この本殿は猿沢池に背を向けて建っていて、どう見ても後ろ向きの珍しい配置。
はじめはきちんと池に向けて建てられたのですが、祀られている采女が、自分の身を投げた池を見るのは耐えられないと一夜にして社を後ろ向きにしたという伝説があります。
秋分の日に奈良に来られる機会があれば、ぜひ足を運んでみてくださいね。