毎年11月13日には興福寺と薬師寺が交代で慈恩会(じおんね)を厳修します。
この日は薬師寺や興福寺の宗派である法相宗(ほっそうしゅう)の宗祖、慈恩大師(基)が亡くなった日で、その日に僧侶が一堂に会し慈恩大師の学徳を偲ぶ論義法要をおこなうのです。
あ、ちなみに「基(き)」は慈恩大師の本名ですよ。一文字って日本人にはちょっとしっくりきませんが、中国の人ですからね。大慈恩寺に住んでおられたので送り名として死後に慈恩大師と呼ばれるようになりました。
論議という名のとおり、この法要では問答が中心。お経についての解釈などについて難しい質問とそれへの回答を「問者(もんじゃ)」と「答者(たっしゃ)」が投げ合います。
そして、何年かに一度、この法会の際に「竪義(りゅうぎ)」というものが行われることがあります。
これは、一人前の僧侶になるための口頭試験です。
生涯に一度しか受験することができないもので、さまざまな条件を満たしていわゆる「受験資格」を満たした学僧である竪者(りっしゃ)がいる年にのみ慈恩会の法要の最後に組み込まれます。
今年は興福寺の大森俊貫さん(35)の受験に伴い3年ぶりにおこなわれることとなりました。
この慈恩会は一般の聴聞も可能なので、これは一度実際に聞いてみようと夜から興福寺へ。
場内へ入れるのは40人ほどの「狭き門」なんですが、早めに行ってなんとか定員に間に合いました。
なお堂内には入れなくてもお堂の外からの聴聞が可能です。堂内の聴聞席は大変狭く移動が不便で、法会も長時間のため、途中で帰る人は外の方が良いかもしれませんね。
場所は薬師寺の旧金堂を移築して中金堂ができるまでの間の金堂として使われてきた仮講堂。阿弥陀如来坐像の前に慈恩大師の肖像画が掛けられていますよ。
まず慈恩会の法会が午後7時半ごろから約2時間あり、かなりの冷え込みのなか独特の抑揚とリズムで問答が繰り返されます。
初めて聞く素人には正直ほとんど内容はわかりませんが(苦笑)、それでもろうそくだけの灯りの下で緊張感はビシビシと伝わってきます。
そして午後9時半ごろからいよいよ竪義。1時間半以上におよぶ難解な問答に臨まれます。
現在はアドリブ(?)ではなく問答はすべて事前の暗記だそうですが、それはそれで大変ですよね。
すべてが終わったらすでに夜の11時過ぎ。
外に出ると星がとてもキレイでした。
その後大森俊貫さんは無事合格されたそうです!