2月最終日。東大寺では練行衆の皆さんが午後に参籠宿所へ入られ、夕刻になると全員の穢れを祓う大中臣祓(おおなかとみのはらい)が行われました。別名「天狗寄せ」とも呼ばれる神道的、密教的な雰囲気のある行法で、昔、毎年この時期に天狗たちが現れて嵐を起こし修二会の邪魔をしたので、天狗たちを集めて祓い清めた、という言い伝えがあります。
11人の練行衆さんのうち、密教、神道の修法をおこなう「咒師(しゅし)」役が行法を担当します。
袈裟を着用し、御幣を持ち、印を結ぶ姿には古の神仏習合の形が見えます。
そのあと、祓いの文言を「黙って」読み上げます。
このとき、細い袈裟を左肩から右肩に掛け替えるのですが、その間だけは仏僧から神職になるのだそうです。
祓文を読み、御幣を振る動作を数回繰り返すことでこの場に天狗たちを呼び集めて祓います。
その後立ち上がって宿所前に移動し、通路にしゃがんで待っている他の練行衆さんたちを清めます。
わずか10分ほどですが、とても神秘的な感じがする行法です。
祓い終わった後は、西側に改めてしめ縄を張り結界します。
そして日付が変わった深夜から、いよいよ14日間に及ぶ修二会の本行が始まるのです。