7月15日と16日の2日間、奈良公園の「鹿の頭数調査」に従事してきました。
奈良の顔ともいうべき奈良公園の鹿さん。
毎年、奈良の鹿愛護会が公園内に生息する頭数を発表していまして、2021年は1,105頭でした。
実はこの頭数、毎年この時期に人の手で数えてるんですよ!
というのも、奈良公園の鹿は野生動物だから。もちろんけがをした鹿などは「鹿苑(ろくえん)」という保護施設に収容されていますが、それ以外の大部分の鹿たちは自由に公園周辺をうろうろしてるわけです。
なので出産シーズンがひと段落したこの時期、人力で一斉調査をして頭数を発表します。ずっと続く超アナログな方法ですが、やはりこれがいちばん確実なんですね。
と、いうわけで早朝5時半に事務所へ集合。
日が高くなると鹿たちはエサ場や休み場へどんどん移動してしまうので、まだ比較的じっとしている早朝のうちに数えるんです。
夜明けの奈良公園の空気は気持ちいいけど…眠い。
事務所内に入ると、その日の班分けと担当コースが貼りだされていますよ。各班は2~3人ずつ。いまはコロナ禍で人数が減らされています。まずはそれぞれの班ごとに着席して概要説明と諸注意事項。
奈良公園全体を11のコースと若草山コースの合計12班に分けて、エリア内をくまなく調査します。
各コース沿いには約50m四方のマス目を設定。コースを歩きながら見つけた鹿がどのマス目に何頭いるかを記録していきます。
この日ワタシは若草山の「山コース」に当たりました。
その後事務所を出て各班ごとの出発地点へ。
それぞれが勝手バラバラに数えると移動した鹿をダブルカウントしたり数え漏らしたりするので、猿沢池を西端のスタートラインとして各班が一列に並び、合図で一斉に計数を始めます。
「山コース」だけは自動車で若草山山頂まで行き、逆に山を歩いて下りながら数える別行動。
最初だけちょっぴりラクチンです(笑)
奈良公園で見かけた人がいるかもですね。
緑色の「鹿の救急車」。
事故にあった鹿などを救助に行く愛護会の専用車です。
今回初めて乗りました。
見た目はわかりませんが環境にやさしい電気自動車なんですって。
山頂までの道中もゆっくり走って道路沿いのエリアを確認しながら。
その後山頂からは車を降りていよいよ本格調査を開始。最初はラクチンでしたが、ここからは森の中へも入ったりとなかなかハードなコースですよ。
また、若草山腹は他よりエリアが広いので確認がちょっと大変。双眼鏡も大活躍です。そして下りの斜面はおっちゃんのヒザに効く…(泣)
森の中は鹿を見つけるのもひと苦労。
ここに鹿がいるの、わかりますか?
解答。
ここにちょろっとおシリが見えてますよ。
こんなふうに地道な調査が続きます。
頭数は、「オスのおとな」「メスのおとな」「今年生まれた子供」の3種類に分けて数え、調査票に記録していきます。
鹿が多ければ多いでこれまた大変(笑)
ひとマス50m四方ですからね。だいたい一目で見渡せる範囲はすべて一度の計数範囲になります。
他の班の人も手伝って、分担して数えますよ。
時間が経つと移動が始まったり隣のエリアからやってきた鹿が混ざったりするのでうかうかできません。
さて2日目は人事異動(?)で平地の10班に。
こんどは調査エリアのほぼ北端、転害門から正倉院前を通り二月堂~若草山麓までを調査します。
腕章つけて今日もいざ出発。
幸い雨も降らなさそうなので助かりました。もし雨でもカッパ着て決行ですよ。
ただ、去年は土砂降りになったのでさすがに中断したそうですが。
班の中でも分担しながら、道の両側を注意して見落としがないように数えます。
で、こうしていくうちに鹿の頭数によっては数えるのに時間がかかる班が出てきますし、猿沢池からスタートしている班は調査距離が長いぶん出発時刻が早かったのでだんだんとお互いの進度がズレてきます。
なので、途中に2か所の待機ポイントを設定。いったんそこで全部の班が横一列に並ぶのを待って、きちんと「ローラー作戦」になるよう調整します。
両隣の班どうしが無線や手で合図を送りあって再度一斉にスタート。
赤い丸の中にお隣の班が見えます(←よく見えないw)
ここで第2問(笑)。
このエリアに鹿は何頭いるでしょう?
こたえ。
4頭いますよ。
ちょっと見づらいので拡大。
…お分かりいただけただろうか。
建物の裏にも隠れていたりするので要注意。
本日は担当コースで53頭を確認できました。
不思議なことにだいたい毎年同じエリアには同じくらいの数の鹿がいるそうです。
事務所へ戻ってからは班の中で計数漏れのチェック。
そのあとお隣の班と、隣り合ったマス目どうしでダブルカウントをしていないかを確認します。
そして調査票を提出して終了。
だいたい8時ごろに解散となります。
このあとは愛護会で集計し、鹿苑で保護している鹿の数を合わせて取りまとめ、週明けの火曜日に報道発表する流れとなっています。
来週には新聞やテレビで「今年の頭数」が報道されるはず。
そのとき、数字の裏にあるこの地道な努力もちょっとだけ思い出してくださいね。