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    「椿菓子」ってご存じですか?
    奈良に春の訪れを告げる東大寺のお水取り(修二会)、その期間中にだけ作られて販売される椿の花を模した季節限定の和生菓子です。

    店先に出されるといよいよ修二会。(萬々堂通則さんにて)

    どうして椿?なのか。
    もちろん季節の花だということもあるんですが、それよりも大きな理由が。

    東大寺の初代別当(べっとう=いわゆるお寺のトップ)で創建に尽力した良弁僧正(ろうべんそうじょう)をまつる開山堂の庭には「良弁椿」という椿の木があり、他の椿より少し遅れてちょうど修二会の頃に花が咲くんだそうです。

    またこの花は珍しいもので、赤い花びらにまるで白い糊を散らしたかのように斑点が入っていて別名「糊こぼし」とも呼ばれます。さっきのお菓子の名前もそうでしたね。
    開山堂にある椿はこの品種の原木と言われているんですよ。
    でも、開山堂ってふだん非公開なので花を見るのはちょっとむずかしい…
    塀の外から見えることは見えるんですが、けっこう奥にあるので双眼鏡や望遠レンズが欲しいところ。

    そこでこちら、以前に特別な許可をいただいて近くで撮った写真です。

    ね。
    お菓子ほどくっきり紅白に分かれているわけではありませんが、雰囲気は似てますよね。

    そして修二会の期間中、二月堂の本尊十一面観音菩薩のまわりをこの椿の造花で飾るんです。
    椿の造花は修二会にこもる連行衆(れんぎょうしゅう)さんたちが本行を前にした試別火(ころべっか)の間に毎年400個ほどを手作りし、ホンモノの椿の枝先に刺して完成させます。

    ※写真は東大寺のパンフレットから

    造花はタラノキを芯にして、紅花で赤く染めた和紙と「糊こぼし」を表現する白い和紙を組み合わせて花びらを、クチナシで黄色く染めた和紙でおしべを作ります。

    ウチにも実物がひとつだけありますよ。
    かなり古いものなのでもう色が変わっちゃってますが…

    と思ったら、椿菓子を販売する和菓子店のひとつ、千壽庵吉宗さんの店先にキレイなものが飾ってありました。
    たくさんあっていいなぁ。ひとつくれないかな(笑)

    また椿は八千年を春、八千年を秋と過ごして四季で合わせて人間界の三万二千年(!)が一年にあたるという中国の伝説の大木「大椿(だいちん)」から長寿の象徴ともされ、古来よりとてもめでたく尊い木とされています。
    そうした関係で、この修二会の椿をかたどった和菓子がお水取りの時期に季節の和菓子として作られるようになったそうです。

    現在奈良市内では十軒ほどの和菓子屋さんでそれぞれ独自の「椿菓子」を作っておられます。
    基本的には白小豆粉にもち粉と砂糖を加えて練り上げた「練切(ねりきり)」を薄く延ばして型抜きしたもので花びらを、中心部のおしべは黄身あんを使って作りますが、それ以外の材料を使ったりあんを工夫したりしてみなさん個性を出しておられますよ。

    いずれも生菓子なので賞味期限はとても短く、通信販売も基本的には行われていません。
    お水取りの時期に奈良へ来られることがあれば、皆さまもぜひこの貴重なチャンスに味わってみて下さい。

    (写真は萬勝堂さんにて)

    でも、さあぜひどうぞと言われても
    どこで買えばいいのか、どれを選べばいいのかわかんない!というお声もあろうかと(笑)
    なので、ここでワタシが実食リポート!
    次の記事からひとつずつ順々にご紹介していきますよ。

    待て!!次号!