奈良で「おたいまつ」と言えばほとんどの方が東大寺二月堂の修二会(しゅにえ)を思い浮かべられることと思います。あれ有名ですもんね、ニュースや新聞にも紹介されるし。奈良の代表的な年中行事で確かに規模も迫力も知名度もダントツです。
でもその二月堂から1.5kmほど南にある新薬師寺でも修二会の時には「おたいまつ」が登場します。
ちなみに「新」薬師寺と言ってもあの修学旅行定番の薬師寺の「新型」ではありません。
確かに創建は新薬師寺の方が後年ではありますが、この「新」は祀られている薬師如来さまの「霊験があらたか」、たいへんおチカラが強いという意味なんです。
ただ、この「あらたか」。漢字では「灼か」と書き、「新(あら)たか」ではないのがややこしい。ニホンゴむずかしいです(笑)
さてそれはともかく新薬師寺の修二会。
東大寺の修二会は3月ですが、こちらでは毎年4月8日におこなわれます。
サクラも咲いて暖かくなってくる頃なので身体にはやさしいですね。
普段の一般拝観は午後5時までですが、この日だけは午後4時でいったん終了。その後、「日中」の法要が営まれる午後5時前からは境内が無料開放されます。
入場は南門から。
柵が閉められていますが、係の方にお声掛けすると中へ入れていただけますよ。
午後5時の時点でもうすでにたくさんの方が来られていました。良い撮影場所を取るために午前中から来ている人もいるんだとか。
境内のサクラも満開。東大寺の修二会とはまた違った雰囲気です。
午後5時から「日中」の法要が始まります。
修二会では「六時の行法」と言って「日中(にっちゅう)」、「日没(にちもつ)」「初夜(しょや)」「半夜(はんや)」「後夜(ごや)」「晨朝(じんじょう)」と一日に6回の「時(じ)」が勤められます。
行を勤める僧侶の皆さんが入堂されたあと参拝者も入堂することができ、本堂に安置されているご本尊、薬師如来坐像とその周りに並ぶ十二神将像を拝みながら聴聞することができます。ただし、内部での撮影は禁止ですよ。
本堂の脇にはこのあと使われる松明が10本、そして奥に一回り大きな籠松明(かごたいまつ)が1本用意されていました。
ここでも本堂に結界のしめ縄が張られていました。
東大寺の修二会で張られているものと同じですね。
「日中」の行法は40分ほどで終了。
そのつぎ午後7時からの「初夜」に臨む僧侶さんの入堂に合わせて「おたいまつ」が灯されます。
あたりも暗くなってきました。いつのまにかすごい人に。
「初夜」が始まる前に本堂正面の扉がすべて開かれます。
本堂の中は灯明と照明で明るいので、仏さまが外からもよく見えますよ。これは修二会ならでは。
そしていよいよ「おたいまつ」に点火。
めらめらと燃える火に先導され、僧侶さんたちが一人ずつ順に本堂前を通り正面でご本尊に拝礼されてから入堂します。
11本の「おたいまつ」は僧侶さんの足元を照らすためのものなので、一本の後ろにお一人ずつ歩かれます。
「おたいまつ」はほんとうに目の前を通るのでかなりの迫力。
私はこの日は前から4列目あたりでしたが、それでもパチパチと燃える音が聞こえ、顔に炎の熱を感じました。
周囲の人の撮影の熱気もすごいですけど…(笑)
実はここで「おたいまつ」を担ぐ童子さんたちは東大寺の修二会を担当されていた方々。松明の材料も同じものを使っているんだそうです。だから、ほぼ東大寺の「おたいまつ」をそのまま間近で見ているのと同じなんですよ。
11人全員が入堂されると規制線が外されます。すると一斉に拝観者たちが本堂の前へ。
扉が開かれているので、行のようすやご本尊を近くで拝むことができ、なんと撮影も可能なんですよ。これもこの時ならでは。
東大寺での修二会では聴聞は外陣から、それも女性はさらにその外側からに制限されます。神名帳の読み上げがないなど内容に違いはあるものの、ここでは誰でも間近で声明を聴くことができる貴重な機会です。
ただし、この混乱ですが…w
火が消された「おたいまつ」は本堂の裏に置かれていて、その燃えさしをいただくことができます。
無病息災などの功徳があるそうで、持ち帰る人も多数。持ち帰るときには節度を持っていただきましょうね。
東大寺とはまた違った趣きがある新薬師寺の修二会。
機会があればこちらもぜひ一度拝観されてみては。
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