• 泊まって楽しむ昭和資料館 ゲストハウスるーのす

    近鉄奈良駅のすぐ近く、ビルの谷間にひっそりと建つ鳥居。
    うっかりすると見過ごしてしまいそうな場所に漢國(かんごう)神社があります。
    この漢國神社には境内社として林(りん)神社があるのですが、ここで先日「饅頭祭」がおこなわれました。

    漢國神社の境内。
    正面に見えるのは本殿で、林神社はこの右側にあります。
    普段は静かなお社なんですが、この日は早くから多くの人でにぎわっていました。

    なぜに神社で饅頭のお祭りが?
    みなさんおなじみ、あのあんこがたっぷり入った甘いおまんじゅう。
    実は奈良が発祥の地なんですよ。
    日本で初めて饅頭を作り広めたのは、林浄因(りん じょういん)という中国の禅僧。14世紀に日本へ渡来し、中国のマントウをもとに考案したと伝わります。マントウは中に肉が入っているため仏教ではお供え物としたり僧が食べたりすることができません。そこで、小豆でつくったあんを入れる工夫をしたそうです。
    これが当時は斬新でおいしい食べ物として大ヒット。さらにその後大仏詣が盛んになり観光客が増えた奈良で人気のお土産として全国に広がりました。「奈良饅頭」は当時のクチコミ大人気商品だったんですよ。

    この日は復刻された「奈良饅頭」も販売。
    売り場は長蛇の列ができていました。
    今回は奈良の5つのお菓子屋さんが製作。基本的な作り方は同じですが、あんの甘さなど微妙な違いがそれぞれにあるんだそうです。

    私は萬春堂さんのおまんじゅうを。
    穏やかな甘さのこしあんで2つとも一度にぺろり(←カロリーはよw)
    表面の赤い点は、もともとの奈良饅頭に紅粉で付けられていた「林」の文字の名残だそうです。

    この饅頭の祖である林浄因を「菓祖神」としてお祀りした全国で唯一の神社が林神社。菓業繁栄を願う全国の同業者さんの崇敬を集めています。
    そして林浄因の命日とされる4月19日に彼の偉業をたたえる「饅頭祭」が、例大祭としておこなわれているのです。

    コロナ禍で長く中止が続きましたが今年は3年ぶりの実施。時折雨が降るあいにくのお天気でしたが、参道には露店がいくつも並び、それぞれ覗く人たちでお祭りムードも盛り上がっています。

    門前では「まんじゅう福娘」が神楽鈴を振ってお清めと招福祈願をしてくれています。
    おまんじゅうを購入した人のみ、と聞いていましたが結局だれでもOKだったみたい。ま、めでたいお祭りですからね。

    本殿前では神事の準備中。お社の配置上、本殿の右側にある林神社の社殿に向き合うと本殿に対しては横向きに座るというちょっと不自然な形に。
    全国のお菓子屋さんから奉納された大量のお供えも横向きですねw

    こちらが林神社の社殿。戦後になってからの建立なので新しいです。おまんじゅうを積み上げたお供えがおいしそ…いやいや。

    午前11時、神事が始まりました。
    祝詞の奏上などのあと、参列した各地のお菓子屋さんや業界団体関係者などが順に玉串を捧げます。

    神事に先立ち、献茶もありました。

    まずは神様も一服。まさに和菓子のお祭りですね。

    最後には一同が向き直り、ちゃんと本殿を拝礼しましたよ。

    境内では藤の花がきれいに咲いていました。今年はちょっと早めかな。
    あと、この漢國神社にはなんとあの徳川家康ゆかりの鎧があるんですよ。

    なんでも大坂冬の陣のとき、敗走途中に境内で作業していた桶屋さんに桶の中へかくまってもらい助かったので、そのお礼に奉納した鎧なんだそう。
    ほんとかな、とも思いますが近くの別のお寺でも似たような伝承があるので、このへんに来たことは間違いないのかも。
    なおホンモノの鎧は現在奈良国立博物館に預けられています。

    神事のあとは参道で獅子舞の奉納。
    お祭りムードも最高潮に達し、こどももおとなも大盛り上がりです。
    カメラの放列がもはやアイドルの到着並み(笑)
    おシシさんもさらに気合が入ります。おつかれさまでした。

    そのあとは「千本杵餅つき」。
    一般的な大きな杵での餅つきと違ってひとつの石臼を何人もが囲み、細い棒で息をあわせてつきます。
    各地でお祝い事などの時によくおこなわれますね。
    「つきたい人はいますかー」と、まわりに呼びかけ。希望者は誰でも参加できるそうです。

    はじめは躊躇する人が多かったのですが、次第に希望者が増えてきます。
    何回かごとに交代してみんなでお餅つき。外国からの観光客も飛び入り参加です。いい思い出ができましたね。

    慣れた人がつく時はこの細い杵で上手に餅を上へ持ち上げて混ぜ返すんですが、さすがに今回のように初心者初対面の集団では無理。どうするのかなと思ってましたが、最後にふつうの杵で仕上げづきをしましたw

    その後、つきたてのお餅が参拝者にふるまわれました。
    以前まで饅頭祭では奉納された大きな饅頭が小さく切り分けてふるまわれていたのですがコロナ禍で中止。
    今年も復活されなかったので、その代わりだったのかもしれません。そしてまた長蛇の列が。

    あまりの人の多さにこれは無理かも…と弱気になっていましたが無事にワタシにもまわってきました。ありがたや。
    この、ついた餅を小さくちぎって丸めるのって案外難しいんですよね。素早く1個当たりの量をうまく調整する係の人の手際の良さが光ってました。

    やっぱりつきたてのお餅はおいしい!

    …と、最後がお饅頭の話じゃなくなってしまいましたがww

    奈良が饅頭発祥の地というのは案外知られていないトリビア(←懐かしい)。

    奈良のお土産に奈良饅頭、も案外アリかも。
    ちなみに林浄因ゆかりの饅頭は、いまでも東向商店街にある「千代乃舎竹村」さんで販売されています。